あなたにはあたしの姿、見えないようだね。
あたしに気付いて欲しくて、わざと桜の木を揺らす。
気付いて、と言うように…。
あたしは…この夜、
忘れられない夢を見た…。
次の日、あたしは学校に行った。
優くんが連れて行ってくれる場所を早く知りたくてたまらなかった。
放課後、手を繋ぎ歩いていく。
緊張するな、なんか。
久しぶりに手を繋いだからかな。
「ねぇ…優くん?どこに行くの?」
そう言って優くんに聞くと、悪戯をした子供のような笑顔であたしを見てきた。
「秘密の場所だよ」
秘密の場所ってどこ?
この街にあるの?
お菓子の家とかいう冗談はやめてね?
反応に困ってしまうから。
「どこにあるの~?」
「秘密」
さっきから優くんの口から『秘密』という言葉しか聞いていない。
あたしの手を引っ張り、小さい丘を登っていく。
見え始める、夕陽とあるモノ。
あるモノとは、寂しそうに存在するベンチだ。
「ここだよ…百合」
広がる街並み。
包み込むオレンジ。
一瞬で奪われた。


