「小林さん、わざわざすまないね。大事な話を…と思ってね。座って?」
校長先生の眼鏡の向こう側の瞳は穏やかだった。心の中でほっとする。
ソファーに座り、林先生もあたしの隣に座る。
目の前には校長先生。
緊張しているのはあたしだけかな。
「留学の件なんだが、会議の結果、君を推薦しようと決まったよ。小林さんは成績も優秀だし、生徒代表にふさわしいからね」
この時、あたしの心の中は空っぽだった。
嬉しそうに話す校長先生を見ることなんかできなかった。
ただ、空っぽのまま、ぼんやりと床を見つめるだけ。
そして空っぽの心の中には、あの人の存在。
それは…、優くん。
「出発は一週間後だ。ホームステイ場所はもう決まっている。場所はカナディアンロッキー。」
あと、一週間…
一週間しかいられない。
「小林さん、どうかした?」
先生があたしの肩に触れて、こう言ってきた。
あたしは、夢か恋愛、どちらかを犠牲になんてできない。


