一分でも一秒でも長くいたい。
そんな些細な願いは届きませんか。
「どうしよ…」
優くんが小さく言葉を漏らす。
あたしも電車が来てしまうという焦りからか、いい方法が浮かんでこないよ。
電車のライトがあたしたちを包み込む。
あ、そうだ。
「あたし…アドレス変わってないから、昔の携帯使えるなら、それを見て送ってきて」
これしか思い浮かばない。
優くんを見上げて笑いながら言う。
「あっうん、ごめん」
「じゃあ、行くね…」
電車は定位置に停まり、静かにドアが開いた。
この電車に乗らなきゃ…。
本当は行きたくないよ。
まだ手を繋いでいたい。
でもダメだよね。
優くんの手を離して、あたしは電車に乗り込む。
その時、映画のようなシーンが生まれた。
「忘れ物!!」
そう言って、あたしの手を強く引っ張る。
スローモーションになっていく世界。
唇に当たる、柔らかい感触。
優くんはあたしにキスをくれた。


