誰かに背中を押されて、穴の中に落とされたのだ。
犯人は、自分。
もう一人の自分が、あたしの背中を押した。

理由は、『もう頑張らなくていい』



疲れた体を癒して、という望みからあたしを落としたのだと思う。

でも体を壊してでも、涙が枯れてしまっても、この恋だけは手に入れたかった。




…桜の木に花びらがなくなってしまった頃。
木の下には花びらが幾つも落ちていた。
休んでいるのだろう、お疲れさま。


学校も普通授業となり、あたしは勉学に集中していた。
やはり留学はしたいし、留学をするには成績が良くなければいけない。

だから苦しさを紛らわすように勉強をする。

けれど、あのことがいつまでも頭の片隅に存在していた。
廊下での出来事。


二人の姿をあんな近くで見て、そして広瀬さんのあの表情を見てしまって。
改めてあたしは邪魔者だと感じた。


広瀬さんからしたら、あたしなんて居なくなって欲しい人物の一人だろう。