会えると信じて、
見て欲しいと願って。


あたしの願いは全て波が拐ってしまうのだった…。



…時間は経ち、もうすぐ一日が終わる。
何時間経っても、優くんとはすれ違わなかった。
計画しておいた場所に行っても優くんはいなくて、テンションが徐々に下がっていく。


このまま会えないのかな。



「百合!お土産買お!買ってないでしょ?」



あたしの気分を読み取った瞳が手を引いて歩いていく。


沖縄の気温があたしの気分と反比例する。

見て欲しくて頑張った化粧も、これじゃ意味がなくなるよ。



「あ、私あの店行きたいかもー!ほら!早く行くよ!」



「先に行ってて?あたしこの店見てくから」




何を思ったのか分からないが、あの店に入りたかった。
神様が教えてくれたのだろうか。
あなたの存在を。



『ふぅ…』と息を吐いて、店の中に入っていく。どうやらここはご当地ショップのようだ。



店に入った途端、目を疑う。



そして息が止まる。
呼吸も止まる。




「ナナ~あっ…た」




店内に広がる優くんの声。
たちまち体に熱が走る。


時が止まって欲しいと強く思った。




体が優くんを求めている。


でも魔法はすぐ消えてしまった。



「優?何か言った─…?」




後ろから聞こえてきたある人の声。
その瞬間、時が動き出した。


その人は広瀬さん。
当たり前のように、優くんを名前で呼んでいた。

昨日からそう呼び合っているの?
もう二人はそういう関係なの?


浮かび上がる疑問。


あたしは耐えられなくなり、その場から走って逃げた。





優くんのいない生活にまだ慣れていないあたしを置いて、優くんは新しい生活に歩んでいた。



そんな、高二の秋。




温もりのない生活は、しばらく続くこととなる…。