「ねぇ優くん答えて…答えてよ…」



「放して」


「おい!やめろって」



すると、あたしたちの間に斉藤くんが姿を現した。
あたしと優くんを引き離し、冷静さを取り戻そうとする。



「おい、優!何があったんだよ、何だよこの騒ぎ」



涙が溢れる。
きっと化粧もとれてひどい顔になっているに違いない。



「…優?」



突然斉藤くんの声が弱々しくなった。
あたしは優くんを見上げる。


一粒の涙が優くんの頬を伝っていた。



「百合を信じられない…百合を幸せにできない…」



あなたを悲しませているのは、あたし。
辛い思いをさせて本当にごめんなさい。



「百合は優くんがいるだけで幸せだよ?」



真っ直ぐと優くんの瞳がこちらに向けられる。
潤んだ瞳に映るのは、あたしだった。



「俺は百合が好きじゃない」




最後にこう言って、優くんは走り去って行った。




まだまだ幼い16歳のあたしは、素直という言葉の意味を知らなかった。
だから、結果的にあなたを失ったのだ。




もう一度、あなたの隣に並べる日を夢みる。




愛してる…ってもう一度だけあたしに囁いて…。