どん底女と救世主。



もともと新居なうえに、私が来るまで使われてなかったキッチンは、しつこい汚れなんてほとんどない。

でも、やっぱり少しは汚れてるな。

この汚れは全て、私が付けたもので。
少しでも残ってると怒られそうだな。この家を出るときには徹底的に掃除しないとな。


この家を出るときか…。いつになるのかな。


一応部屋は探しているもののなかなか時期的にもいい物件が見当たらない。

焦らなくてもいい、という課長の有り難すぎるお言葉に甘えきっている現状では、当分難しいかも。


どうしよう。このまま新しい部屋が見つからなかったら。

いやいや、そんなに課長に甘えられない。元々1ヶ月以内の約束だし。


でももし、課長の気が変わったら?

課長に追い出されたら、課長に見放されたら、ほんとうに私居場所がない。


やっぱり私はどん底に居るらしい。


はあ、と大きなため息をつきながら、コンロの焦げを擦りとっていく。


この為に買ってきた重曹のおかげか、どんどん元どおり真っ白になっていくコンロ。

私の心とは正反対だな、なんて。