よほどキスに夢中なのか、私が帰ってきたことにふたりは気づかない。
湧き上がる吐き気を抑えつつ、私はまた意を決した。
「どういうこと?」
びくりとふたりの身体が面白いほど震え上がり、リビングの空気が一変する。
「咲っ!いや、これは…」
言い淀む勝に、悲しいとかそういう感情は湧いてこない。湧き上がるのは、勝と女に対する嫌悪感。
私のお気に入りのカウチソファでなに変なことしてんのよ。
と、そんなことしか浮かばない私も大概冷たいなと思ったとき、勝の背中に隠れていた相手の女と目があった。
「先輩…」
生々しくテカる唇で、私のことを呼んだこの女のことを私は知っている。
「希、ちゃん?」

