どん底女と救世主。




「それよりも冴島、どうするんだ」

「へ?」

「その浮気男のことだ」


なんで分からないんだ、とでも言いたげな怪訝そうな顔の深山課長は、箸を器に置き肩肘をつき聞いてくる。


浮気男、改め勝とのこと。


希ちゃんのこととか、左遷の話とか、課長が帰ってきたりと考えることがあり過ぎて一番きちんとしないといけないことを後回しにしていた。


どうしたいの、私。分からない…。
自分の気持ちだって言うのに。


まるで失態を犯したときの様に、黙ったままじっと私の答えを待つ深山課長。


いや、その目に鋭さはなく、むしろ心配しているかのような温かさを感じて余計に居心地が悪くなり、ウーロンハイからシフトチェンジした手元にある生ビールを煽った。


あ、まずいかも。

アルコールが身体のなかでじわりと広がっていくのが分かる。

寝不足のせいかな。最近考えることが多すぎて浅い眠りばかりだった。


本当は私、あまりお酒は弱い方じゃないんだけどな。


ふわりと視界が歪み始めたので、ぎゅっと目に力を込め意識を保つと、深山課長の質問に答える。