「久しぶりだな、冴島」



ふたりきりのミーティングルーム。

会議用テーブルに肘をつき、私が腰掛けるのを待つ深山主任は昔を懐かしむような顔をしてそう言った。


主任のファンと化している女性社員が聞いたら、ひどく羨ましがりそうなシュチュエーションだ。


しかし、私の中で蘇るのはあの地獄の日々。


入りたてだというのに容赦なく無理難題を押し付けられ、事務員なのに営業先を連れまわされて。

ああ、思い出したくもない。


それに、今はそんな昔の話を思い出してる場合じゃないんだ。


この忙しい人がわざわざ時間を作ってこんなところに呼び出すなんて、ただ昔話をするためだなんてことはあり得ない。


私に一体どんな用があるって言うんだ。