「あとは、」
「あとは?」
次は何が来るんだろうかと身構えている彼女が面白くて、また意地の悪いことを言いたい気もするが、今日のところは勘弁してやろう。
「今日の夕飯は鍋がいいとか」
「え、そんなことですか?」
「大事なことだ」
「昨日もすき焼きだったのに?」
「すき焼きと鍋は違うだろ」
「そうですか?」
そうだろう。全然違う。
「まあ、私は楽出来るからいいですけど」
と、気分が浮上したのか、いつものようににこやかになった彼女に胸をなでおろす。
困ってる顔も好きだが、やはり一番は笑顔だな。
苦手な人混みの中の初詣も、彼女となら悪くない。
ーー願わくば、来年も彼女の隣で。
鬼の神頼み。 【完】

