どん底女と救世主。



始業の鐘がなる数分前にようやく現れた希ちゃんに気を取られている間に、朝礼の時間が訪れる。


ーーーーガチャ。


一課の扉が空いた瞬間にみんなの視線が扉へと集中するのが分かった。


多くの視線を浴びて入ってきたのは、スラりと脚の長い見るからにスタイルの良い男を連れた営業本部長。


集まっていた女性社員から悲鳴にも似た歓喜の声が上がった。


そして、その瞬間に気がつく。


「先月の営業成績の発表の前に、一課の新しい課長を紹介する。
海外事業部へ異動した佐伯課長に代わって新しく一課の課長に就任した、深山 潤君だ」


後ろの窓から入る朝日を浴びて、なんだか神々しく感じるその人は、深山主任だ。


この人だかりは深山主任目当て。


ああ、ついに帰って来てしまった。