どん底女と救世主。


いや、待って。そう言われると、最近課長の周りに希ちゃんがいることが多かったかも。

でも、課長がいつもの如くあしらっているように見えたから全然気にしていなかった。


近頃の私は、自分の気持ちに振り回されてばかりで周りが全く見えていなかったらしい。


「付き合ってる系の方は、また自分で噂流してたりしてねー」

「うーん…」

「あの子どうなってんの?」

「さ、さあ?」


身を乗り出して聞いてくる絵理に首をかしげる。
私に希ちゃんのこと聞かれても困るって。


「野田君とはもう関係切ったって聞いてたんだけどさ」


そうなんだ…。

確かに、勝本人ももう希ちゃんとは関係ないようなこと言ってたっけ。


「彼氏寝取ったような子と同じ課なんて地獄じゃない?」

「地獄。気まずいし。
でも課長に事情話してるから、あまり関わらなくていいようにしてもらってる」

「へえ、あの人そんな気が回るのね」

「うん、感謝してる」


もう一度へえ、と感心したように言う絵理は届いたデザートを取り分け始めながら続けた。