「あ、そうだ!深山課長と言えばさ、」
メニューからガバッと勢いよく顔をあげ、もう一度課長の名前を出す絵理に今度はなんだろうと身構えていると、
「今、園田 希と噂があるよね」
「え?」
思わず口から漏れたのは、さっきみたいな大きな声じゃない。
あまりの驚きに出た声は、か細くて消え入りそうな声だった。
「あれ、知らないの?」
「う、うん…」
「結構話題になってるのにー」
不服そうにそう言うと『まあ、あの人は色んな女と勝手に噂立てられてるけどさ』と付け足した絵理。
胸がざわりと嫌な音を立てる。
「付き合ってるらしいとか、園田 希が付き纏ってるだけとか。色々あるわよ」
「そうなんだ…」
たしかに今日もやたら深山課長にべたべたしてたような…。
希ちゃんは割と上の人に愛想がいいからそこまで気にしてなかったけど。

