「だって深山課長は咲の天敵だもんね」
そう言ってカラカラ笑う絵理を視界の端に入れながら、氷が溶けて薄くなったグァバジュースをストローですする。
うわ、美味しくないな…。
「また扱かれてるの?」
「ううん、さすがに今は」
よかったね、と絵理はもうこの話に興味が無くなったのかメニューをパラパラとめくりながらデザートを探し出した。
それほど絵理は、私と深山課長の間に『ラブ的な何か』が起きるなんてありえないと思ってるんだ。
当たり前だ。私も、ありえないと思っていたから。
なのに、変わってしまった。
深山課長が名古屋に帰ってきてから。
一緒に暮らし始めてから、知らなかった課長が見えてきて。
変わってしまったのはきっと、私の気持ち。

