どん底女と救世主。



「司、深山課長と冴島は何かあるのかなってぶつぶつ考えてたわよ〜」


語尾をわざとらしく伸ばして、にやにやとしながら絵理が詰め寄る。


「で、実際どうなの?深山課長と『何か』あるの?」

「『何か』って…?」

「うーん、ラブ的な『何か』?」

「ラ、ラブ?!」


思ってもいないワードに驚いて、思わずさっきよりも1.5倍の声を出した私に絵理は眉をひそめた。


「もー、さっきから咲声大きい」

「ご、ごめん…」


ラブ的ななにかなんて…


「ないよ。あるわけないじゃん…。仕事中にそういう話してたから怒られただけ」

「だよねー。私もありえないって言ったんだけどね」


胸がずきりと音を立てて痛みを発した。
それは自分で発した否定に、その否定への肯定に。