でも、
「猫も可愛いですね」
「ああ」
心なしか、課長の目尻も下がっている気がする。心なしか。
猫は人に懐かないイメージだったけど、ここの猫たちは人に慣れてるのかすごく人懐っこい。
それとも仕事だから?猫なりのプロ意識かな。
そんなことを考えていると、一匹の猫が私の足にすり寄ってきた。
今まで、課長が人気過ぎて私には目もくれてくれなかったのに。
丸っこくて、柔らかくて、温かい。癒されるなあ。
あれ、よく見るとこの子…。
「課長、この子うちの部長に似てません?」
体全体は白色なんだけど、額だけが黒。
しかも、まるで七三分けのような模様のこの猫は、少しぽっちゃりとした体型とも相俟って営業本部長 中川(なかがわ)部長にそっくり。
深山課長によく見えるように抱き上げると、課長の眉間にしわが一気に寄った。

