『ちょっと、待って…!』
私の呼び止めも虚しく、扉を開けてしまった課長は店内を見て少し固まった。
幸い、課長も猫アレルギーとか猫が苦手とかそういうことはなかったので、そのままここでランチすることになったんだけど。
深山課長、なぜだかめちゃくちゃ猫が寄ってくる…。
この人、猫にでさえモテるのか。
課長の膝の上を巡る争いが繰り広げられ、ようやく今の猫に落ち着いたところだ。
私のものだと言わんばかりに、課長の膝の上でくつろぐこの猫はどうやらここの女王さまのような存在らしい。
誰もこの猫から課長の膝の上を奪いにこようとはしない。
気の強そうな見た目の猫だけど、課長が撫でるたびにニャァニャァと正に猫なで声を出している様はなかなかの甘え上手だ。
「綺麗な毛並みですよね。なんて種類の猫なんでしょう」
「さあ。犬なら大概分かるんだが」
「私もです…」
どうやら課長も私も犬派らしい。なんで私たちここにいるんだろう…。

