「絵里、今日打ち合わせ入ってないの?」


うちのホテルでウェディングプランナーとして働く絵里は、この時間帯に打ち合わせが入ることも多くてあまりお昼を一緒に摂ったことはない。


だから、今日はないのかな?と単純に疑問に思いそう聞いただけだったのに。


「そんなの今はどうだっていいの!」


近くにあった空いている机をばんと叩きなぜか苛立ったように絵里はそう言った。


「噂になってるよ」


今度は小声で言った絵里の言葉に心当たりが多過ぎる。


社内で噂になるようなことといったら、私と勝と、あと希ちゃんとのことしかない。


でも、噂回るのあまりにも早すぎない?


胃のあたりがぎゅーっと痛くなるのを感じる。
ああ、なんで私がこんなに苦しまなきゃならないの。


若くて可愛い後輩に彼氏を奪われた不憫なアラサー女だとでも言われてるのかな。


もう嫌だ、そう心の中でぼやきながら席に着き絵里と同じく日替わり定食の豚の生姜焼きを箸でつまんだ。


けど、せっかくつまんだタレがたっぷりと絡ませられた美味しそうな生姜焼きはすぐに真っ白な皿へと落ちてしまう。


だって、絵里の話はあまりにも驚愕な内容だったから。