「え、まだ帰ってきてない?」

食堂を出て部署へ戻ると、飯沼が自分のデスクでメロンパンを頬張っていた。

「藤堂さんなら30分前に出ていったまま、まだ戻ってきてねーよ」

さっき彼女は先に部署に戻ると言っていたはずなのに。
どこへ行ったのだろう。
腕時計を見ると13時32分。
昼休憩が終わるまであと28分。

「もし帰ってきたら、俺が探してたって言っといてくれ」

「お前はどこ行くの」

「藤堂さん探してくる」

飯沼にそう言い残して、俺は再び部署を出る。
彼女の行きそうなところって、どこだ?
彼女は怒っていたし、一人になりたいはずだ。
なら、屋上か?

何の根拠もないけれど、人があまり寄りつかない屋上に居るような気がして、俺は無意識に足が動き屋上へ向かっていた。