昼休みから少し外れた時間帯のため、ピークを過ぎた食堂は賑わいに欠けていた。
俺は味噌炒め定食、彼女はハンバーグ定食を頼み、お盆を持って席につく。

「いただきます」

彼女は丁寧に手を合わせ、箸を取って食べ始める。

「いただきます」

俺も遅れて彼女を真似て手を合わせ、箸をとる。
しんとした空気が俺たちの間に流れる。

いつ切り出そうか…。
切り出そうにも何とも切り出しにくい空気が流れている。
彼女は何も言わず、もくもくとハンバーグを食べ続けている。

「き…今日良い天気ですね!」

「そうね」

「明日は気温が30度超える真夏日らしいですよっ!」

「そうなの」

「……」

俺のどうでも良い投げかけに、彼女は素っ気ない言葉で返す。
俺は何も言えなくなり、小さくなって味噌炒めを頬張る。
いつもの彼女なら、笑って"何言ってるの?"と返してくれるはずだ。
やはり様子がおかしい。

「何か…あったんですか」

俺の言葉に、彼女の箸を持つ手が止まる。
やはり何かあったらしい。

「…何もないわよ?」

そう言って箸で小さく切ったハンバーグを口に運ぶ。

「嘘です。最近普段の藤堂さんがしないようなミスばっかりしてるじゃないですか」

「私だってミスくらいするわ。人間だもの」

「有給を取った次の日から様子がおかしいじゃないですか。あの日に何かあったんじゃ…」

「何もないわよ」

「そんなわけ…」

「何もないって言ってるでしょ!」

彼女の怒鳴るような声が食堂中に響き渡る。
まわりのご飯を食べていた社員たちが一斉にこちらに視線を向けた。