「ちょっと待って、頭が追いつかな……」


こんがらがる頭を落ち着かせるために一歩身を引いた、その時だった。



タケの背後で、ガシャンッと何かが倒れる音がした。

音のした方向には、街灯に照らされ、血塗れの男性が自転車と共に、家の前に倒れている姿が目に入る。


あの、男性は……?


まさか、いや、でも。

見間違える筈がない、だってあの人は、私の、大好きな……

「レン!? 」


タケを押し退けて、何故か血塗れのレンの元へと走る。

レンは身体を引き摺りながら、ポストの辺りまで近づいて来ていた。


「レン!どうしたの、その血っ……一体何がっ」


レンは私の問いには答えずに震える手でポケットから携帯を取り出し、時刻を確認する。

「18時、10分……。ははっ、俺、天才かよ……。でも、また、ダメだった……」

携帯は先程倒れた衝撃が伝わったのか、画面がバキバキに割れてしまっている。

「18時10分? もしかして、……」


最後の”死の手紙”には、赤いペンでこう書かれていた。


【18時10分。君の元へ、手紙の差出人が現れる。】


「じゃぁ、まさか貴方が……」

青白い顔で白い息を吐くレンは、私を見て微笑んだ。

「そう。アイ、俺が手紙の、……差出人だよ」