扉を開けるのを催促するかのようにもう一度、チャイムが鳴らされる。


さっちゃんを救い出す方法も、考えなきゃいけないのに。


そんな苛立ちと共に音を殺して階段を降り、丸い覗き穴からチャイムを鳴らす人物を確認した。

「えっ! なんで、貴方がここに……」

鍵を開けてガチャリと扉を開く。


闇色に染まる寒空の下、そこにいたのは。


「よっ、アイ 」

キャラメル色したコートを羽織り、マフラーを首元に巻いたタケが、目の前に立っていた。

「なんでタケが、ここに居るの? 今日、さっちゃんと遊んだんじゃないの? 」

タケは赤い鼻をすすりながら、目線を斜め下にズラす。

「アイ。やっぱり俺、我慢できねぇわ」

彼はそう言っていきなり、暗がりの中で私の身体を抱き締めた。