【12月3日、18:00 商店街にて通り魔発生。刺されて死亡。】

いつもとは違う、短い”死の手紙”の内容。

ー『今日を乗り越えて、明日を迎えるぞ。だから今日は家から出るなよ』ー


レンと交わした約束。

部屋にかけてある時計の針は、17時55分を指している。

「え、良いの……? 」


スピーカーから聞こえる頼りない声に、私は現実に引き戻された。


その声の主は、傷付き落ち込んでいる、私の、かけがえのない親友。

「え、あ、……」


様々な選択肢がぐるぐると頭を駆け巡り、答えを出せないでいると。


「私が、会いに行くよ。来てもらうの、悪いし……。ダッシュで用意するからっ。アイも、家にいるでしょ? じゃぁ、今から、行くね! 」


嗚咽を抑えながら早口に、さっちゃんは電話を切ろうとする。


マズイ。さっちゃんの家は商店街の近く。

しかも、私の家に早く来ようとするならば彼女は恐らく、商店街を抜けてくるだろう。

「ちょ、ちょっと! さっちゃん! お願い、聞いて! 商店街には絶対に行かないで! さっちゃん! 」


力の限り声を張り上げるが、私の耳に届いたのはさっちゃんの返事ではなく。


「ブチッ、ツー、ツー 」


無情にも、通話が切られた音だった。