「この野郎!! 」


男の後ろから、怒気を孕んだ男子生徒の声が、闇に落ちた空に響き渡る。


その直後にバキッと鈍い衝撃音が聞こえ、男が崩れ落ちるのがレンの背中越しに見えた。


男を殴り倒した男子生徒がゆっくりと立ち上がる。


「大丈夫か?! アイ、レンっ」


「た、タケ?! 」

目を丸くして彼の名を呼ぶと、肩で息を切らしたタケが軽く首を鳴らした。


「”死の手紙”が気になってよ。こっそり後をつけてたんだ。そしたら、お前らが襲われてんのが見えて……」


彼がそこまで言いかけた時、レンがハッと顔を上げる。



「男が、いない……? アイツ、いつの間に……」



先ほどまでストーカーが殴り倒されていた場所を確認すると、既に悪魔は闇に紛らせて姿を消していた。



「やだ、どうしよう……」


もしも、殴られた報復とかを男が考えているのなら……狙われるのは、私だけじゃない。


幼馴染みの、レンやタケだってその矛先が向けられるに違いない。