「アイ、そろそろ時間だな」

「えっ、あ、うん」


妄想に浸っている中、突然レンに声をかけられ驚きつつも、暗闇の中で必死に目を凝らす。


前方に、横断歩道が見えてきた。


そうか、もうすぐ死ぬ可能性のある事故……


【18時40分、重い荷物を持ち倒れそうになるおばあさんを助けて、トラックに敷かれ死亡。】


共に歩くレンも、私と同じことを思い浮かべたのだろう。


何が起こってもすぐに駆け出せるようにと、踵が少し浮かせている。

「良いか、絶対に俺の側を離れるなよ」


低い声が耳に届くと同時に、右手に何か温かいものが触れた。


「わっ、レンっ」

レンの手が、ぎゅっと私の手を掴んでいたのだ。

慣れない状況に困惑しながらも、気持ちを落ち着かせるためにゴクリと生唾を飲み込む。

と、その時。


違う横道からやってきたお婆さんが、両手に荷物を抱えて横断歩道を渡ろうとするのが見えた。