お疲れ、と手を上げながら歩み寄ってきた幼馴染みに、首を傾げる。


「あれ? どうしたの、タケ。私に何か用事? 」

部室から急いで来たのか、彼は頬を少し赤らめながら鼻を擦った。

「アイさ、”手紙”が怖いんだろ?俺が家まで送って……」

どこかくすぐったいの?っと聞いてしまいそうな程に全身からもどかしさをほとばしらせる彼がそこまで言いかけた、その時だった。


「アイ、お待たせ」

タケの背中越しに、息を切らせたレンの声が聞こえた。

私に話し掛けているのが自分の友人だと気付いたレンが、1度だけ大きくパチリと瞬きをする。

「タケ? どうかしたのか? 」

先ほどまで不自然な雰囲気を漂わせていたタケはいつもの顔に戻り、頭の後ろで両手を組みながら、白い息を吐く。


「あ、いや〜、ははっ。なんだ、レンに送ってもらう予定だったのか。悪りぃ悪りぃ! じゃ、俺は帰るわっ」

彼はそう言って乱雑に巻いたマフラーを揺らしながら、小走りで私達の前から去って行った。


レンはそんなタケの後ろ姿を見つめながら、ふぅと短くため息をつく。

「変なやつ。帰り道は同じ方向だし、皆で一緒に帰れば良いのにな」