家に到着するや否や、急いでポストの掴みを引っ張って、勢い良くガチャリと開ける。

もしかしたら、もう届いているかもしれない。

そんな淡い期待を、胸に抱きながら。

しかし、ポストの中は空っぽだった。


あの”死の手紙”は、入っていなかった。

「だめ、か.....」

空虚なポストは、まるで残念でしたと嗤っているようで。


フクロウが鳴きそうな寂しい世界に別れを告げ、ガックリと肩を落としながら靴を脱いで家へと上がる。

「ただいまー」

「あ、おかえりなさい、アイ。手洗ってきなさい、ごはんにするわよー」

お母さんの声に短く返事し、ギシギシと階段を上がって自分の部屋と向かった。


「あー、もう。一体なんなのよ、この手紙は」


机に放り出した”死の手紙”を手に取り、私の人生を左右する内容に、頭を抱える。



手紙が本物ならば、私はいち早く内容を確認して、死を避けなければならない。

なぜならば、こんなところで死ねないから。

私には夢がある。希望がある。


保育士になって、子どもたちに好かれるような優しい先生になって、あわよくばレンとカップルになって...…


なんて妄想を膨らませたい、未来がある。


「......はぁ。明日の朝も、ポストを確認しなくちゃ」