階段に足をかけてもまだなお腕を引き続ける親友に、思わず声を上げた。


「ちょっ、ちょっと待って!自分で降りるからっ」

「やーっとその気になった?はい、手ぇ離すよ?」

離れてゆくさっちゃんの手に、ホッと胸をなで下ろす。

階段から落ちないように、しっかりと手すりを掴まえながら、一歩一歩慎重に降りていく。


結論から言えば、私は階段から落ちることなく職員室に辿り着くことが出来た。

が、しかし。


階段を降りる途中、急いで駆け上がってくる同級生が、ドンッと勢い良く肩に触れ、背筋になんとも言えない悪寒が走る。


もしさっちゃんに急かされるがまま、階段を降りていたなら。


私は手紙の通りにその女子生徒とぶつかり、階段から転げ落ちていたかも知れない。