殺人鬼からのラブレター

ー....同時刻、高架下の河川敷では...ー


「あー、腹減ったなぁ」

薄汚れた衣類を纏っている川澄 吾郎は、寝床のテントで死んだ魚のような目をして寝そべっていた。


今の彼を支配するのは、空腹による虚無感。


「何か食べたい……」

そう呟いた時、上の線路から電車による凄まじいブレーキ音が、高架下に木霊した。


「な、なんだ? 」

伸び切った髪を揺らしながら起き上がり、音のした方へと歩いていく。

遮断機の前に辿り着いた彼は、絶句した。


自分の娘と同じ年頃の女子生徒が、電車に跳ね飛ばされていたのだ。

「うっ、こりゃヒデェ……」

見ると跳ね飛ばされた女子生徒と同じ制服を着た子ども達が、嘔吐したりその場に蹲っているのが目に入る。



辺りは阿鼻叫喚のパニック状態で、過呼吸になっている者もいる。


元々正義感の強い川澄 吾郎は、近くにいた生徒に声を掛け、「携帯を貸してくれ」と頼んだ。


青白い顔をして吐き気と戦っている生徒から携帯を受け取り、救急車と警察署に電話をかける。

「おい、コッチにおいで」

そして周りの生徒たちが二次災害に巻き込まれないよう、道端に誘導してゆく。


後日、彼は勇気あるその行動を、警察署から表彰されることとなる。



そして……