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胸が、鷲掴みにされる想いに駆られる。

こんなにまで汚れてしまった俺に、アイはこう告げた。

「12月1日の私に好きだよって、そう言ってあげて。その言葉だけできっと私は、救われるから。生きて、レン。私は貴方に、生きてほしいの」


好きな人に、息をしていて欲しい。


その想いは俺も同じだ。

だからこそ、死に続けるお前を助けていたんだ。


けれどそんなことをしてくれなくても、”救われる”と、この時間軸の彼女は言う。


「……レンってばさ、私がどれだけレンのこと好きか、知らないでしょう? 」


そう、悪戯に笑いながら。


俺は何度も助けることに失敗しては、死なせて余計に君を苦しめていたのに。


そんな俺を、君は許してくれるのか?


嗚呼、昔からやっぱり君は、底抜けのお人好しで。


「……知ってるよ。アイは、恋心隠すの、下手くそだからな」


いつでも俺のことを、好きでいてくれるんだな。



頬に涙が張り付いて、上手く笑えない。


自分の鼓動が弱まり、景色が霞んでいく。

意識が、遠のいて12月1日に巻き戻されていく。



霞む君の姿、絶える白い吐息。

温かな温もりが冷たくなる俺の身体を抱き寄せて、最後の最後に鼓膜に届いたのは、愛する彼女の声だった。


「今まで頑張ってくれて、ありがとう。大好きだよ、レン……」