レンはこう説明を付け加える。


恐らく、私が死ぬ筈だった事故でレンが庇ったことにより、世界は狂い始めたのだろう、と。

それを証明するかのように、幾らレンが12月1日に戻されようと、私は12月1日の8時00分に電車に轢かれそうになる。


その話しを聞いて、私に一切の迷いは無かった。

友人が死んでしまい、大好きな人も殺人鬼と化してしまう世界よりも、もっと……


幸せな光景の中で、別れを告げたいと、思うから。



「解決策があるなら、じゃぁ、12月1日に助けずに私を元の事故で死なせてくれれば……」

そこまで言いかけた時、レンは苦しそうに言葉を吐く。


「そんなこと、できるわけっ、ないだろ。俺はいつの間にか、アイのことが……っ。だから違う解決策を、模索し続けてきたんだ、今まで……」

我が耳を疑った。


レンが、私のことを好きだって?


ずっと憧れていた幼なじみも、私を好きでいてくれていたの?


……ならば答えは簡単明瞭だ。


口から血を吐きながら涙を流すレンの頬にそっと手を当て、私は彼に微笑んで見せる。


「ねぇ、レン。私を救う方法がひとつだけ、あるよ。それはね」


レンがこちらを向いたのを確認してから、言葉を続ける。


「12月1日の私に、告白してあげて。さっきの言葉の続きを言ってあげて。好きだよ、って。それだけできっと私は、救われるから……」