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血塗れのレンから全ての真実を聞き終えた私とタケは、その場に固まったままどちらも口を開けないでいた。

ただ、私の瞳からは……静かに涙が零れ落ちていた。

こんなにボロボロになるまで私を助けようとしてくれた彼に、人を殺してしまったレンに……どうしようもなく、悲しくなったから。


「ちょっと待て、レン」

タケは動揺しながら、血塗れで地面に倒れるレンに歩み寄る。


「サチエが、死んだ? 通り魔に刺されて?なんでそんな適当なことが言えんだよ! 嘘ついてんじゃねぇ! 」

「嘘じゃねぇーよ、事実だ……」

タケがグッと胸ぐらを掴むと、痛そうにレンは眉間にシワを寄せた。

「さっきも、言ったが……、通り魔からサチエを庇おうとして、刺された……。それが、俺が怪我してる理由だ……」

よく見ると、彼の身体の下には血溜まりが出来ている。

タケは短く舌打ちし、彼の胸ぐらからそっと手を放した。

喋るのも辛そうで痛々しい姿をしたレンは、尚も言葉を続ける。

「絶対に、サチエを助けたかった。何故なら、アイ……それはお前を助けるためでも、あったからだ」

「わ、私を助けるため? 」


「ああ。お前はサチエが死んだことによって、自責の念にかられ、数日後に自殺する……」

それはあまりにも真っ直ぐで迷いの無い声だった。


そして、私の心に生まれ始めている感情を見透かしている、グサリと突き刺さるような言葉でもあった。