「ぐっ、」

身体全体に鋭い痛みが走り、俺はその場に倒れ込んだ。

通り魔は俺が崩れ落ちるすぐ前に突き刺した包丁を引き抜き、次のターゲットに狙いを定める。

「レンくん!! 」

福田 幸枝は泣きそうな顔で俺の側にしゃがみ込み、肩を揺すってきた。

彼女の背後で、通り魔の口がニヤリと白い歯を見せる。

「ば、か、……逃げっ、……」


俺が言い終える前に福田 幸枝は背中を刺され、口から吐血し、俺の身体に力無く覆い被さった。


「く、そっ…… 」

どれだけ頑張っても、努力しても、報われない。

目の前が真っ暗に染まっていく。

希望の持てない”明日”がまた、やってくる。


俺に出来ることはもう、何もないのか?


「……いや、まだ、だ……」


通り魔が周りの住人に取り押さえられ、意味不明な言葉を大声で叫んでいる中、俺は気力を振り絞って立ち上がり、福田 幸枝の自転車に跨った。


……この時間軸での最後に、加藤 愛に、会いに行こう。

今こそ全てを話してみよう、そう思ったんだ……。