12月1日、午前6時00分。

目が覚めると同時に俺はアイの家のポストに”死の手紙”を入れ、家から包丁を持ち出して、高架下の河川敷へと向かった。

熱でぼんやりとする身体で自転車を漕ぎ、ある人物を目指す。


それは……


「うわぁ! 誰だ、お前は?! 」

12月3日に通り魔となりアイを殺す男。

河川敷に住むホームレス、川澄 吾郎。

俺が手にした包丁を高く振りかざすと、男は慌てて物が散乱したテントに逃げようとし始める。

「や、やめてくれぇ! 俺が一体、何をしたんだ! 」


「……何をした、だと? 」


殺意を込め、包丁で逃げる男の背中を深く突き刺した。


男は短い悲鳴を上げた後、唸り声を上げてテント内を転がり回る。

俺は男に馬乗りになり、是が非でも執拗に刺し続けた。

「お前は逃げるアイの背中を、こうやって、こうやって……何度も、何度も、刺しただろうが! 」


電車が頭上の線路を通過し、男の断末魔を掻き消していく。

テントに血溜まりが出来た頃、俺は我に返り、乱れた息を整えた。

「はぁ、はぁ……」


足元に転がる男は、恐ろしいものを見たかのような惨憺たる表情をしたまま、ピクリとも動かなくなっていた。