巨大な凶器と化した鉄の塊が、目と鼻の先まで迫ってきていた。


歩道には幾人もの同級生や同じ学校の生徒が、焦りと恐怖の面持ちでこちらを見つめている。


「ぶつかるぞ! 」
「キャーーッ! 」

切羽詰まった、誰かの悲鳴が聞こえた。

俺たちの姿に気付いた電車が、唸りを上げて急ブレーキをかける。

「れ、レンッ?! 」
「早く外に出ろ! 」

アイの腕を取って引きずり、ありったけの力を振り絞って、彼女を遮断機の外に放り投げる。

「きゃっ! 」

アイは短い悲鳴とともに、ベシャッと地面に叩きつけられた。


人1人を放り投げ、前屈した身体を起こした、その瞬間。


〈キキーーーッ!〉

「っ、……」

耳をつんざくようなブレーキ音と、身体が何かに押しつぶされる衝撃が、俺を襲った。