『別れよう』


ワカレヨウ…



この五文字を何度も心の中で練習していた。


いざとなると、なかなか言えない自分がいた。



実際、想像していたよりも俺自身恐怖を感じていた。



ゆかりがいない生活。


愛のない寂しい生活。




また一人ぼっちの人生が始まる。




「別れよう」


泣きながらの喧嘩の後だった。


俺と一緒にいるのに、携帯の着信音を気にしたゆかり。


一緒にいても、傷つけ合うだけだった。



「嫌だよ・・・龍と一緒にいたい。」


ゆかりは、ドラマの主人公のようにお決まりのセリフを言いながら、俺の腕を掴んだ。


その声は、だんだん弱くなり、聞こえなくなった。



もう一度、俺が言えば、ゆかりは頷くだろう。



やけに落ち着いた自分が、恐怖に震える自分を見下ろしていた。