「龍…ボタンちょうだい!」



卒業式が終わると、俺に向かって走ってきた。


ゆかりは、目の周りを真っ赤にしていた。



ゆかりの制服姿をじっと眺めながら、俺は勢い良く第二ボタンを引きちぎる。


手が痛かった。


心が痛かった。




どうして信じることができないんだろう。


俺を好きだと言ってくれるゆかりの言葉を…


俺をずっと好きでいようとしてくれている彼女のこと、心のどこかで冷めた自分が見てるんだ。



…無理だよ。


…どうせ、すぐ他の男が見つかるよ。





そんな風に思う俺。




俺達の日々が終わった。



明日からは、初めて巣箱から出してもらえた鳥のように、君は羽ばたくだろう。



俺は、巣箱の中から出ることができないまま、いつまでも飛び立てないでいるんだ。



飛び立っていった君の背中を見ながら、俺はまた巣箱に戻る。