校門を出て…



俺はゆかりの姿を見つけた。





雨は降っていない。



ゆかりは手に持った傘をくるくると回しながら、うつむいていた。




車道を走るバイクから流行の曲が聞こえてきた。


俺は深呼吸をして、空を見上げた。





電線に止まったスズメ達が、心地よい鳴き声を出す。






「ごめん…!!」




好感度を上げる為に少しだけ小走りで近付いた。


ゆかりは、驚いたように目を大きくして顔を赤らめた。




「来ないかと思った。」



ゆかりはそう言って、傘で地面をツンツンと叩いた。



ゆかりは俺を待ってた。




「ごめん・・・ あのさ、こないだごめん。タオル返してくれた時…俺、嫌な態度で…」



歩きながら話すのは初めてだった。


女の子の歩幅がどれくらいなのか、よくわからない。




とにかくゆっくりと歩いた。




「ううん…私こそ、教室であんな渡し方して…誤解されたら困るよね。」


誤解…?



俺は立ち止まって、ゆかりの顔をじっと見た。



ゆかりの目は、とても澄んでいた。


風でなびいた髪が美しくて、触れたくなった。




「好きなんだけど…迷惑?」


また計算外の言葉が口から出た。


もっと、お互いのこといろいろ話したり、少しずつ近付いていく方法があるだろうに。






俺はいつも突然で、唐突で…相手を困らせる。





「私も、好き。」




やまびこのように、『好き』という言葉が何度も俺の耳に届く。





私も好き…




そう言った?





何が好き?





俺?







不良扱いされて、


先生からも嫌われてる、『俺』を?





こんなに真っ白で、雪の中を走るうさぎのような人が…



汚れたネズミのような俺を



好きだと言った。