10分遅れてやってきた彼は、

ゆかりから聞いた「黒のセーター」という情報だけで、私を発見した。


彼は、だぼっとした白いセーター姿。

胸元にはネックレス。


腰で履いたズボンのポケットから顔を出す携帯電話のストラップ。


赤と黄色と緑の三色のどこかの国旗のような絵の描かれたシルバーのプレート。


彼が私の元へ一歩ずつ近付くたびに、そのストラップがちゃらちゃらと音を立てた。


さっきまで気になっていたOLの話し声も、何も聞こえない。


その

チャラン・・・チャラン・・・って音に、私のドキドキが高まる。





こんなドキドキは、生まれて初めてだと、確信した。