真っ黒な車の助手席の窓からゆかりを呼ぶ彼が、目に入るライトでよく見えない。



また

会えるなんて思ってなかった。



出逢ってしまった。

神様のいたずらで、私は彼に恋をする権利を与えられてしまった。




黒い車は、気持ち悪いくらいに黒光りしていた。

窓から出した彼の腕には、ブレスレットが揺れていた。




通り過ぎる車のライトに照らされるたびに、

彼の髪が金色に輝く。



ライオンのたてがみのように・・・

周りにいる人が、一瞬ひるんでしまうくらいの威圧感。




だけど、きっとそれは本当の彼の姿じゃない。


彼もまた、私と同じカタツムリ。




殻の中は、

あの日の優しい彼。




捨てられた子猫を見つめるあの温かな瞳を

私は忘れることなんてできない。