「なぁ。お前、昨日魔王に無視されたんだよな?」

「うん…」

「なのに、どうして今日はお前にべったりくっついてたんだよ?」

「べったり…って」

「べったりだっただろ!
昼休みの時なんかトイレまでついてきたんだろ?」

「まぁ…。
でも、別にトイレの中まではついてきてないし…」

「俺が来たからだろ?
俺が来なかったら、あいつ、ついて行ってたぞ」

「まさか…」

変人だからって…

さすがにそこまでは…。

「平太…」

「うん?
あれ? 魔王。
ってか、俺の名前呼んだか?
初めてじゃん? なっ?」

「そうだね…」

「で、何だ?」

「原井先生が…呼んでる…」

「原…井?」

「教室に居る…」

「そうか…」

「ちょっと…。
“そうか”じゃなくて…。
早く行きなさいよ…」

「いや…呼ばれる覚えが全くないしさ。
帰ろうぜ!!」

「行きなさい!!」

「でも…間違えかもしれないしさ…」

「間違えって何よ!!
へ…東間くんが原井先生が呼んでるって!!
そうでしょ?」

変人がコクりと頷く。

「ほら。
行きな!!」

「でも…」

「行・き・な!!」

「分かったよ…。
…帰んなよ」

「帰んないよ…。
校門の前で待ってる」

「…行ってくる…」

「うん…」

平太は教室に走って戻って行った…。