な…何?

何で私…

抱き締められてるの?

「ねぇ…ちょっと…」

「…お誕生日…おめでとう…」

バッ。

変人は私から離れると何事もなかったかのように歩き出す。

「ねぇ…ねぇ! ねぇ!!」

「………」

無視か!!


何なのよ!!!

急に抱き締めたかと思えば…。

急に『…お誕生日…おめでとう…』って言って…。

また急に離れるなんて…。

意味分かんな…。

『嬉しかった…』

『嬉しいから…』


ねぇ…。私に…どれだけ嬉しかった事か嬉しい事か…教えるためなの?

それだけお姉ちゃんに言いたいって事?

「嬉しい…。ありがとう…」

本当にありがとう…。


変人が振り返り、私を見る。

あなたが喜んでくれて私も嬉しい…。

「でも…言わないで…。
お姉ちゃんが本当に好きなら…」

今度は目を逸らさず言うと

変人がゆっくりと頷く。

「ありがとう…」


「さぁ…。急いでお姉ちゃんの所に帰りましょ?」

私はそう言いながら変人を追い越して前を歩く。

変人に追い越されないように必死で、必死で、歩く。

必死に、必死にバレないように。

必死に、必死に声をころして泣いた…。

気づかれたらきっとあなたは

どこからかトイレットペーパーの紙を出して

私の頬を濡らす涙を拭き取るでしょ?

そしたら私はまたあなたを好きだと思って…。

またあなたを好きになってはいけないと思う…。

好きなのに…。

好きなのに…。

好きじゃいけない…。

そんな事を思ってはまた涙が出てきて…。

あなたといると悲しみの涙が止まらない…。

お願いだから…。

お願いだから…。

あなたを好きでいさせないで…。