漂う嫌悪、彷徨う感情。


「いらっしゃいませー」

カウンターにいた女性が元気よく挨拶をしながらお辞儀をした。

顔を上げた女性は、ワタシたちを見て目を見開き、顔を引き攣らせた。

真琴ちゃんだった。

真琴ちゃんの背後では、スタッフの人たちが何やらザワついき始めた。

・・・もしや。

「・・・もしかして、ここのスタッフのみなさん、日下さんが真琴ちゃんの元カレって知ってたりします??」

小声で日下さんに耳打ちすると、

「うん。 真琴とこの会社のツアーに申し込んだ事あるしね」

日下さんはコソコソする事もなく、シレっと答えた。

「・・・なかなかエグイ事考えますね」

日下さんの本当の思惑が見えた気がした。

日下さんの新しい彼女がワタシだって事自体、真琴ちゃんにとっては屈辱なのに、日下さんはそれを周知の事実にして、真琴ちゃんに自分の事を諦めさせようとしているのだろう。

「面白くなってきたでしょ??」

日下さんは不敵に笑うけど、ワタシは今の状態を楽しめる程肝は座っておらず、かといって引き返せる状況でもない為『そうですね』とは言えずに日下さんの腕をぎゅうっと握った。