漂う嫌悪、彷徨う感情。


横断歩道を渡りきり、2・3分歩くと、

「ハイ、ココ。」

日下さんが足を止めた。

「・・・え??」

立ち止まったその先にあったのは、ビルの1階に店を構えた旅行会社だった。

確かにどこかに旅が出来たら気分はスッとするだろう。 でも、全然聞こえは悪くない。 むしろ、楽しそうな響きだ。

首を傾げながら日下さんを見上げると、

「ココ、真琴の職場」

日下さんの口から、耳栓をしたくなるような耳障りの悪い言葉が飛び出した。

「・・・・・・なんでですか?? 日下さん」

声が震えて掠れる。 喉の奥が『ヒュー』と鳴った。 危ないかもしれない。 真琴ちゃんと対面してしまったら、また呼吸が乱れてしまうかもしれない。