漂う嫌悪、彷徨う感情。


「あ、どうも。 お疲れ様です。 オレの職場、この近くなのでちょっと来てみました。 さすがにちょっと心配で。 美紗ちゃん、大丈夫ですか??」

そこにいたのは、和馬だった。

「大丈夫ですから!! ここにアナタがいると、ちょっと色々と・・・」

ここに美紗が現れて、和馬が『あ、美紗ちゃん』なんて親しげに近付いていったりした所を部署の人間に見られた日には、美紗の嘘が真しやかなものになってしまう。

和馬の腕を掴み、強引に会社の外に連れ出そうとすると、

「なになに?! どうしたんですか?? なんでオレ、ここにいちゃいけないんですか??」

理由も話さず追い出そうとするオレが癇に障ったのか、和馬はその場に立ち止まり動こうとしなかった。

「・・・美紗が、社内で嘘を吹聴していて・・・。 自分が悪者になってオレを庇おうとしてる」

『話すから取りあえず歩いて下さい』と、今度は和馬の背中を押す。

「嘘って、どんな??」

『歩くから取りあえず話してくださいよ』と、和馬がくるりと身体を翻し、オレを見た。