漂う嫌悪、彷徨う感情。


「なんか良く分かんないから、飲み会でじっくり聞かせろよな」

岡本がオレの肩を『ポンポン』と叩いた。

「ゴメン。 今日は行かない。 また今度な」

肩に置かれた岡本の手を下ろし、パソコンに視線を戻す。

岡本たちと酒を飲んでいる場合ではない。オレがじっくり話さなければいけない相手は、岡本ではなく美紗だ。

「はぁ?!! オマエの為の飲み会だって言ってるだろうが」

「頼んでないだろうが。 つーか、ただ単にオマエが飲みたいだけだろうが。 オレ、報告書作んないとなの。 マジでデスク戻って。 オマエも仕事しろ。 働け、岡本」

ズィーっとオレに顔を寄せた岡本の顔面を『これ以上近寄るな』とばかりに右手で鷲掴み、引き離した。

「ノリ悪ー。 佐藤、ノリ悪ー」

口を尖らせ拗ねる岡本を他所に、報告書の作成に勤しむ。

さっさと仕事を終わらせ、速やかに退社し、一刻も早く美紗と話し合いたい。 岡本の事など構っている場合ではない。