「・・・許せるの?? 木原さんの事」
下げたオレの顔より更に下に自分の顔をすべり込ませ、オレを覗く部長。
さっきのふざけた感とは違うトーンの声で尋ねる部長は、きっと真剣に訊いているのだと思うが、結構間近にある部長の顔に笑いが込み上げてきて、思わず吹き出しそうになるのを必死で堪えた。 近すぎるよ、部長。
「許す必要なんかないんです。 木原さん、何も悪くないんです。 ちょっと色々拗れてしまって・・・」
「・・・そっか。 何があったか気になるところだけど、上司だからって部下のプライベートに首を突っ込むのは違うと思うから自粛するね。 オレももう1回木原さんと話して慰留してみるから、あとは佐藤くんがどうにかしてよ!! オレ、自分の部の空気が悪いの嫌なんだもーん」
部長がオレの顔の下を潜り抜け、短い両腕を『うーん』と唸りながら伸ばした。
「ありがとうございます。 ・・・部長の部下で良かったです。 本当に」
プライベートのゴタゴタを仕事に持ち込む部下のお願いを聞き入れてくれる、寛大な上司の下で働けている事を幸せに思う。



