「・・・『漂う』の件、木原さんが言ったんですけどね」
何故か熱く『漂う』を説明する部長が面白くて、ちょっとしたカマをかけてみたくなった。
「え?!! 嘘でしょ?!! 何でもっと早く言わないの!! 営業たるもの、変な方向に話しが流れ出したら光の速さでカットインしなきゃダメでしょ!! 今話した事、口外厳禁ね!! というか、忘れて忘れて!!」
自分の唇の前で両人差指を交差させ×を作って困り顔をする部長は、どこかのご当地のキャラクターになれそうなほどに愛くるしい。
「まぁ、嘘なんですけれども」
次なる部長のリアクションを期待して嘘を白状すると、
「嘘かいな!! 佐藤くん、上司に嘘吐くとは見上げた根性だね」
東北の雪国出身の部長が、たどたどしいエセ関西弁でツッコミを入れた。 下手くそすぎて、逆に面白い。
「すみません。 部長とお話するのが楽しくてつい・・・。 話が脱線してしまったのですが、木原さんの件、どうかお願いします」
話を戻し、今一度部長に頭を下げた。



