漂う嫌悪、彷徨う感情。


「木原さんとの約束で詳しくはお話出来ないのですが・・・まぁ、そうですね」

「ふーん。 佐藤くん、哲学好きの名言吐きたがり野郎が何言ったか知らんが、『漂う』程度のものなんか害はあれど致命傷にならんぞ。 まぁ、蓄積していったら違うかもしれんけどな。
たとえば、火事で煙が漂っているとするだろ?? そうしたら、ハンカチか何かで鼻とか覆うだろ?? 器官に煙が侵入しないように守りながら避難すれば助かるだろ?? 火が燃え盛っていたら無理だろうけど、それはもう『漂う』ではなく大惨事の域だから論外な。 漂っているもの自体をどうにか出来なくとも、身動きがとれないわけじゃない。 
つまり何が言いたいかと言うと、『漂う』なんていう中途半端な言葉でまどろっこしい話をするヤツ、オレ嫌い」

会ったこともない和馬を毛嫌いする部長。

なんか和馬に申し訳ない。 あの時の和馬はただ、思った事を口にしただけだっただろうに。